ネス湖には今も首長竜の生き残りがいる
霧の立ちこめる湖面から、長い首がゆっくりと持ち上がる。恐竜は、まだ絶滅していなかった——。
噂の内容
スコットランド北部、細長く深いネス湖。泥炭で茶色く濁った水は、数メートル先さえ見通せません。この湖の底に、太古の生き物がひっそりと生き延びている。そんな噂が、世界中の人々を90年以上も引きつけてきました。怪獣の名はネッシーです。湖畔にたたずむ古城の廃墟が、その雰囲気をいっそう怪しく演出しています。
話は1930年代にさかのぼります。湖の北岸に沿って新しい道路が整備されると、車で通る人々が湖面をよく目にするようになり、「巨大な何かが泳いでいた」という目撃談が相次ぎました。地元紙が報じると、噂は一気にイギリス全土へ、そして世界へ広がっていきます。
決定打となったのが1934年に新聞に載った一枚の写真です。水面からすらりと伸びた首と小さな頭。撮影者がロンドンの外科医だとされたことから「外科医の写真」と呼ばれ、ネッシーの姿を世界に焼きつけました。長い首に丸い胴、その姿は中生代の首長竜プレシオサウルスそっくりだ、と話題になります。
その後もソナー探査や潜水艇、観光客のスマートフォンまで、あらゆる目が湖を見張ってきました。映像が撮られるたびに議論は再燃。湖が深すぎて、まだ誰も底の隅々まで見たことがない。だからこそ、いてもおかしくないと言われ続けているのです。
ささやかれる証拠
1500年近く前の記録がある
7世紀に書かれた聖コルンバの伝記には、ネス川で人を襲った怪物を聖人が退けた話が記されています。ネッシーの伝説は近代よりずっと古い、というのが信じる人の根拠です。
とにかく湖が深くて暗い
ネス湖は深いところで200メートルを超えるとされ、水は泥炭で濁っています。大型の生き物が身を隠す余地は十分にある、と考えられてきました。
ソナーに謎の反応
過去の探査では、正体の分からない大きな反応がソナーに映ったと報告されたことがあります。魚の群れにしては大きい、という指摘もありました。
表向きの説明
有名な「外科医の写真」については、1994年に関係者の証言から、おもちゃの潜水艦に首の模型をつけて撮影したいたずらだったことが明らかにされています。また、ネス湖は最終氷期には氷に覆われており、現在の湖ができたのは約1万年前とされるため、首長竜が数千万年もそこで暮らし続けたとは考えにくいとされています。
2018年にはニュージーランドの研究者らが湖水に含まれる環境DNAを調べ、爬虫類のDNAは見つからなかった一方で、ウナギのDNAが非常に多く検出されたと発表しました。大きなウナギを見間違えた可能性も話題になりましたが、目撃談のすべてが説明されたわけではなく、湖を見つめる人は今も絶えません。
ちなみに、ネス湖は面積こそ中くらいですが、とにかく深いため、貯えている水の量はイングランドとウェールズにあるすべての湖を合わせたよりも多いと言われます。湖畔にはネッシーの展示施設や土産物店が並び、怪獣そのものが地域の一大観光資源。見つからないことが、むしろ最大の魅力なのかもしれません。
さて、あなたはどちらを信じますか。この噂、誰かに話したくなったら